酒呑童子
●再話/中川文子 ●話者/藤原晴子 ●画/佐々木愉美子
昔むがし、丹波の大江山さ酒呑童子っていう鬼の大将居(え)だけど。毎晩みでゃえ鬼達(おにだ)、京の都さ下りで来て、
貨幣(ぜんこ)盗ったり、若ぎゃ娘っこ掠(さら)ったり、なえてかえて悪りぃごどばりするなだけど。んだがら、夜間になれば、人っこ一人出歩
(であり)がねゃぐなって、町の中火消だみでになってしまったんだど。
心痛(いだ)めだ天子様、六人の荒武者さ鬼達の征伐命じだんだど。一に頼光(らいこう/源頼光)、二に渡辺(わたなべ/渡辺綱)、三に貞光(さだみつ/碓井貞光)、四に季武(すえたけ/占部季武)、五に保昌(ほうしょう/藤原保昌)、六に金時(きんとき/坂田金時)って呼ばれる強(ちえ)武士(さむらい)
ばしだったども、もしかの時(じぎ)のためだどて、強(きづ)い酒っこ持(た)ながせで出してやったど。山伏に姿変えた六人、その酒ど握飯(にぎりまんま)どワラジ背負(しょって)、宇田川の川岸上っていったど。どごまで歩(あり)たたて、それらしい者(おの)見当だらねゃおで、見当違いだななべがど思って一服していだば、川上がら箸一本流れで来たけど。「じんじょ、誰が居るはずだ」どて、奥さ奥さど上って行ったば、若ぎゃ娘っこ、川で瀬戸物(せとおの)洗ってらけど。理由(わげ)聞い
だば、「おら、鬼がえて掠われで、京がら連(ち)で来らえだなだ。家さ戻りでゃなだども、道もわがらねゃし、見張りに見つかれば殺さえでしまう。早ぐ親兄弟さ会いでゃ」って泣ぐけど。「ああ、良(え)がった。俺達(おらだ)、鬼がえて掠われだお前達(みゃだ)どご助けに来たなだ。したどごで、お前(みゃ)どさ願事(ねぎゃこど)ある。鬼達(おにだ)、今晩(ばんげ)も酒盛りするべがら、この酒っこ一番の大将さ飲ませでけれ。あど、暗りゃぐなったら裏門の錠、外しておいでけれ」って言ったば、娘っこ、桶の中さ酒隠して鬼の隠家かぐれがさ戻って行ったど。荒武者達、酒盛りも盛り過ぎる頃見計らって、頼光どご先頭にして裏門がらドドッと押し入ったど。綺麗だ姐っこがえて酒っこ注いで貰って大騒ぎしてだ鬼達、動転(どでん)して慌だいでる合間(こんみゃ)に、渡辺、この時だどて大将の酒呑童子さかがっていったど。
さっと鬼の首(くひと)切り落としたば、頭(かしらぎ)ゃんぐりして、渡辺の兜さガジッと噛み付いだけど。辺(あだ)りシーンとなったけど。酒呑童子、首切られだたて
勢いあるおで、兜から離れねゃけど。渡辺、頭がら兜脱いで、足掛げでなんじがかんじが首外したど。娘っこ達、無事親元さ送り届げらえだど。それがら都さ、鬼出はらねゃぐなったけど。したども、酒呑童子の首切り落どした時じぎ、血、田畑さ飛び散って、蚊どが蛭(へろ)になったんだど。んだがら蚊どが蛭、人の血吸うなだど。
とっぴんぱらりのぷー。